わかりやすい全訳『孫子の兵法書』その4:作戦篇|兵は拙速を尊ぶ

2020年5月26日孫子の兵法書三国志, 三國志, 孫子

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ゲーマーのための兵法書シリーズわかりやすい全訳『孫子の兵法書』」第4回は、『孫子の兵法書』13篇の2番目である「作戦篇」をお届けします。前回の記事は以下のリンクから。

 

戦争はお金がかかるもの

第2章に突入ニャ。

今回は「作戦篇」です。

作戦」というのは、中国語では「戦争をおこなう」という意味になります。日本語の意味での「作戦」は、中国語では「戦略」ですね。

日本語とは「作戦」の意味が違うのニャ。

本篇ではいくさをおこなううえでもっとも重要な「お金(コスト)」について語られます。

暴君だろうと独裁者だろうと、お金がなければ戦争はできません

世知辛い世の中ニャ。独裁者もお金には勝てないのニャ。

これは現代においても、事業を立ち上げるのに資金がいるのとおなじです。立ち上げたあともランニングコストが発生します。

孫子はいいました。

戦争の基本は、戦車千台、輸送車千台、武装した兵士十万人です。

千里の距離に兵糧を輸送するばあいには、国の内外で使う費用や、外交官の接待費、漆(うるし)や膠(にかわ)などの武具の材料、戦車や甲(よろい)の供給などが必要になります。

一日に千金を費やして、やっと十万の軍隊を動かせるのです。

一日にすごい金額がふっとんでいくニャ。

そのあとも、まだまだお金がかかります。

したがって、戦いを長引かせるということは、軍を疲弊させ、鋭気をくじくことにもなります。

敵の城を攻めれば、兵力は尽きて無くなります。

だからといって、長期間兵士たちを露営で待機させれば、(そのあいだも兵士たちへの費用は発生しますので)、国の経済は疲弊してしまいます。

給料を払わないってのはだめなのかニャ?

そんなことをすれば、兵士が逃げるか、反乱を起こすかでしょう。

給料もなしに、命の危険をさらして働く理由なんてありませんし。

日本のブラック企業がそんな感じになってるニャ。

さっさと逃げるべきですね。あと長時間労働の証拠は残して、労基に駆け込めばいいかと。パワハラ上司のばあい、暴言を録音するためのペン型ボイスレコーダー(Amazonリンク)おすすめです。証拠がないと、さすがに労基も対応するのが無理なので。

 

「兵は拙速を尊ぶ」の正しい意味

兵が疲弊し、鋭気もくじかれ、力もつきて、お金もなくなれば、諸侯たちはその疲弊に付け込んで攻めてくるでしょう。

たとえ味方に智慧のある者がいたとしても、出兵後の困窮のあと始末をすることなど到底できません。

ゆえに兵は拙速(下手でもすばやくおこなう)を聞くも、いまだ巧久(上手くても長引かせる)を見ることはありません。

最後の部分は有名ニャ。「兵は拙速を尊ぶ」ニャ。

そうですね。長引かせれば長引かせるほど、そのあいだにどんどんランニングコストがかかってきますからね。

だから撤退するにしても、すばやく判断しなければなりません。

ビジネス用語の解説で、「兵は拙速を尊ぶ」の意味を、

「事業は多少雑でもスピーディーに立ち上げるべきだ」

誤って解釈しているものがよく見られます。

これは「孫子の兵法書」をつまみ食いした知識で書いてしまっているためにおこっているものと思われます。

先の「計篇」を読んでいれば、こんな発想はまず出てきません。だから全部を通して学ぶ必要があるのです。

莫大なコストのかかる戦争を始めるためには、ちゃんとした分析が必要ニャ。拙速じゃだめニャ。戦争をしないという判断も必要なのニャ。簡単に戦争をしたらだめニャ。

拙速が必要なのは、戦争をはじめたあとです。

戦争を継続するか、それとも撤退するか、その判断を早くする必要があるのです。

戦争を長引かせているあいだにも、コストがかかりつづけるのです。

1カ月に1000万円の赤字を出している企業なら、倒産の判断を2ヶ月遅れさせれば2000万円の損害ニャ。いますぐ潰せば2000万円が浮くニャ。

こういう判断を早くすることですね。この「作戦篇」ではコストの話をしているので、兵の運用の話ではないのです。

郭嘉はこれに対して「兵は神速を貴ぶ」という言葉を残しています。兵の運用は迅速におこなうほうがいいということです。こちらは運用の話ですね。

そもそも戦争が長引いて、国家に利益があるということは、これまでにあったためしがありません

ゆえに、戦争をおこなうことの損害よくわかっていない者には、戦争による利益よくわかっていないのです。

コスト意識がないと、戦争をしてはいけないニャ。

戦争を長引かせるな」という意味も含まれています。

 

国民に迷惑をかけるな

戦争が上手い者は、国民を2度も兵役に徴兵するようなまねはしませんし、兵糧輸送は3度もおこないません。

軍事物資は自国で調達し、兵糧は敵地のものを使用します。ゆえに兵糧はじゅうぶんなのです。

国が軍隊のために貧しくなるのは、兵糧を遠くに輸送しなければならないからです。

遠くに運べば、国民は貧しくなります。

近くで戦争をおこなえば、物価が高くなります。物価が高くなれば、国民の貯蓄はなくなります。国民の貯蓄がなくなれば、税金も厳しくなってくるでしょう。

戦場では兵力が尽き、国内では財力が無くなり、国民の生活費は十のうち七までが減らされてしまいます。

国費も、壊れた戦車や疲れた軍馬、防具や武器、大きな牛や大きな車などの費用で、十のうち六までが減らされてしまいます。

だから知将は、敵地で兵糧調達することに努めなければなりません。

敵から奪った一鍾の兵糧は、自軍の二十鍾分に匹敵します。

敵から奪った馬糧の一石は、自軍の二十石に匹敵します。

国から兵糧を持ち出さずに、現地調達しろということなのニャ。

国から兵糧が運び出されれば、それで国民の生活が困窮してしまいますからね。

 

戦争は利益が重要

敵を殺す者は(怒りや敵対心)です。

敵の(物資)を奪う者は(じっさいの利益)です。

ゆえに車戦で車十台以上を鹵獲したときには、最初に鹵獲した者に賞をあたえ、敵の旗を自軍のものと取り替え、鹵獲した車は自軍の車と混ぜて乗用し、降伏した敵兵は優遇して自軍に編入します。

これこそが、勝ってさらに勢いを増すということです。

戦争の目的は人を殺すことではなく、利益を得ることニャ。それがなければ戦争をする意味はないニャ。

そうですね。戦争をしたあとに、財政もすっからかんでは、なんのために戦争をしたのかわかりませんしね。起業でもおなじことがいえるでしょう。

 

まとめ

ゆえに、戦争では勝利を貴び、長引くこと貴びません

ゆえに戦争を理解している将は、国民の生死と、国家の安泰・危機を決定することのできる主宰者といえるでしょう。

欲しいのは利益ニャ。戦争自体がしたいわけではないのニャ。

莫大なコストがかかりますので、戦争をしないで利益が得られるなら、当然しないほうがいいですね。

また戦争をするにしても、どれだけのコストが必要なのか、それのコストによってじゅうぶんな利益が得られるのかなども「(見積り)」をしなければなりません。

これでまた前回の「計篇」の内容も必要になってくるニャ。

こういう計算は、すべて戦う前にやっておくべきなのです。

起業するにしても、家賃や仕入れなど、毎月どれだけの費用が発生するかもあらかじめ計算しておかなくてはなりません。

それをやらないとただのバクチです。上手くいくこともあるかもしれませんが、それはレアケースです。

旧ブログ「マイナーな戦略ゲーム研究所」でボードゲームカフェの収入について書いたことがありますが、興味がある方は読んでみてください。

それでは、今回はここまで。

「作戦篇」は一回で終わったニャ。

次回は「謀攻篇」になります。