ボードゲームカフェ、ボードゲームスペースを開業した場合の年収についてー開業時・開業後の注意点についても
近年、日本ではボードゲームカフェの数がかなり増えています。
それに伴って、「ボードゲームカフェを開業したい」と考える人も増えてきています。
開業のための資金がそれほどかからないことと、自分の好きなボードゲームを仕事にしたいと思っている人が多くなっているのでしょう。
筆者は台湾に住んでいますが、ボードゲームカフェは多いです。見ていて楽しそうなので、筆者もいずれお店を開きたいなと思っています(一応日本の食品衛生責任者と甲種防火管理者の資格を持っています)。
しかしあくまでもボードゲーム「カフェ」ですので、飲食店経営にはそれなりの設備が必要になります。
保健所の許可を取るために2槽シンクと手洗い場を付けたりなど、居抜きでなければこれらに結構な費用がかかるでしょう。
「カフェとか保健所の許可を取らないといけないし、初期投資が多くて面倒そう。HACCPも義務化されるし」
と考える人もいるかと思いますが、その場合に行き着くのが、ボードゲームを遊ぶ場所だけを提供する「ボードゲームスペース」です。
今回はボードゲームスペースの年収と、ボードゲームカフェとの年収や収入源の違いに加え、保健所や風営法、開業場所についてなど、開業時・開業後の注意点についても述べていきます。
ボードゲームスペース開業における収入源
飲食をいっさい提供しなければ、2槽シンクも保健所の許可も必要なし。
机と椅子とボードゲームを並べて完成です。
しかし場所代だけで商売が成り立つのかという問題が出てきます。
実際、ボードゲームスペースを提供する店は存在しています。
が、ボードゲーム販売やカード販売など物販を伴っているケースが多いかと思います。
もしくはすでに老舗化していて、入店時にいきなりフリータイム料金相当の金額を取ることのできる店など(「ゲームスペース柏木」など)。
これは長年の信用によって成り立っているので、知名度のない新規参入がいきなり入店時に1000円としても客はなかなか入ってくれないのではないかと思います。
普通は時間あたりいくらで設定をします。
そして一定時間を超えたときにパック料金やフリータイム料金に移行というのが一般的でしょう。
また各地にあるボードゲーム同好会のように、遊ぶだけならボードゲームスペースに行く必要はなく、会議室などでもいいのです。
友達が多い人なら、家で遊べばいいだけですし。
お金を払ってでもボードゲームスペースで遊びたいという動機、そこでしか体験できない何かを提供する必要があります。
ひと月にどれだけの利益が得られるのか
ボードゲームスペースだけでひと月いくら稼げるかを計算してみます。
最近はフリータイム料金があるのが当たり前なので、簡単にするためフリータイム料金を使います。
週休1日、フリータイム料金を800円(休日1000円)とし、店内の座席数が30席(20坪ぐらいを想定)、平日(18日間)の稼働率40%、土日(8日間)が60%とした場合、
平日:800 X 30 X 0.4 X18 = 172800円
土日:1000 X 30 X 0.6 X 8 = 144000円
合計:317,200円
思ったより少ない。
しかもここから家賃や電気代を引かなければなりません。
家賃と管理費、電気代もろもろ込みでひと月15万円だとして(家賃8万円ぐらいのところを想定し、相当安く見積もっています。もちろんこれ以外にも宣伝費などお金はかかりますが、今回は考えないことにします)
317200 – 150000 =167,200円
年間にしたら
167200 X 12 = 2,006,400円
年収200万円ぐらい。
人は雇えませんので、基本ワンオペです。
ここから自分の生活費やら年金やら保険やらも払っていかないといけない。
大きく儲ける必要はないと言っても、数百万円という初期投資があるから、その返済もしないといけない。
お金だけで考えたらバイトした方がいいかもしれません。
ちなみにこの手の店は季節や天気の影響をもろに受けるので、毎月すんなりこの収入が得られるとはかぎりません。
もちろん病気になれば、その間の収入は0です。
「平日の稼働率が40%は少なく見積もりすぎ」と思われるかもしれませんが、30席の40%は12席です。
平日、12人がフリータイム料金を払ってくれる状況というのは、知名度の低い店ではむしろ厳しいかもしれません。
空き時間をレンタルスペースとして貸し出すという方法もありますが、これも競合が多いので厳しい気はします。
ネットで探せばいくらでも安くて良いのを見つけられますし、市の会議室とかなら一時間数百円で借りれたりしますしね。
保健所の許可なしで飲み物の販売は可能なのか?
場所代での収入の低さを補うため、ペットボトルジュースを店内で販売することを考えます。
ペットボトルの店内販売は、保健所の許可が必要な県とそうでない県があります。直接保健所に聞くのがいいでしょう。
ただ許可が必要な場合でも、飲食店営業のような厳しい条件はないので難しくはないかと思います。
しかし、コップに注いで客に出した場合は飲食店営業許可が必要なので注意してください。
あくまでフタの閉まっているペットボトルを販売するだけです。
ドリンクバーも、たとえフリードリンクでも保健所の許可が必要です(保健所に直接聞きました。グレーな県もあるらしいですが)。
ペットボトル1本で得られる利益を50円ぐらいだとして(コップで出すのに比べれば利益率は悪いです。買い手はスーパーの値段と比較できますので)、一日に平均6人ぐらいが利用するとしたら(持ち込みありだったらもっと少ないかもしれません)、26 日で、
50 X 6 X 26 = 7800円
あまり足しになりませんね。
お菓子の販売についても考えましょう。
お菓子も袋を開けて皿に盛った時点でアウト(保健所の許可が必要)。既製品を袋のままで売らないといけません。
スーパーでの値段を知っている消費者に対して高い値段は付けられないので、収益は微々たるものかと思います。
それでもやっていくためには
方法1:おとなしく飲食店営業許可を取る
フリータイム料金が当たり前になった今では、店の回転率がさらに悪くなっているかと思います。
そのため店に滞在している客に何かを提供して利益を得るというのも並行して行わなければ、開業資金の回収が困難でしょう。
「資金回収」「店の継続」ということも考えると、やはり場所代だけでなく、飲食店営業許可を取ってドリンクや食事などで稼いでいく必要があるかと思います。
飲食があると客が店に入る動機にもなりますし、長時間滞在しやすいお店ということにもなりますしね。
多少開業資金が高くなっても、キッチンなどの設備は欲しいところです。
方法2:家賃のかからないテナントを利用
毎月のランニングコストにおける家賃の割合はかなり大きいです。
もし「持ち家がある」「ありえないほど安い家賃で貸してくれる大家がいる」「無料で貸してくれる優しい友人がいる」のであれば、家賃分がそのまま収入になります。これはかなり大きいです。
ただその物件が商売に適した場所に位置しているかどうかはまた別問題ですが。
方法3:そもそもボードゲーム同好会でよくない?
ボードゲームを遊ぶスペースを提供するのが目的なら、自分でボドゲ会を開いて場所を借り、参加費を取って一緒にプレイするのがいいかと思います。
そもそも店員が客とボードゲームを遊ぶと風営法にひっかかります。
TRPGのGMをつとめるなど、客を喜ばせる目的でおこなったらアウトです。
あくまでプレイ人数が足りないのでサポートとして入っているという形でないといけません。
ぶっちゃけグレーな部分であり、今後「サポートすら不可」みたいになる可能性も否定できません。
自分も遊びたいという目的があるのなら、ボドゲ会なら初期投資もほぼ無いので(会場を借りる費用が発生する場合もありますが)借金をする必要もありません。
方法4:あくまで副業
他に仕事を持っていて、副業として経営するという形です(どちらが副業でもいいですが)。
それでしたら収入の少なさを補えるし、潰れても困ることはないかと思います。
結論
多くの収入を得ることだけが人生ではありませんが、少なくとも開業資金を回収して黒字にしなければ店は続けられません。
筆者の台湾の親戚の多くが開業していますが、上手く回っている人もいれば、閉店してしまった人もいます。
ただ「店を開いた」というだけでなく、店に入りたくなるようなひと工夫が必要になってくるかと思います。
特に東京、京都、大阪あたりは激戦地になってきていますので、居抜きのテナントにテーブルを並べたぐらいでは厳しいかもしれません。
お客さまはそこでしかできない経験を求めているのですから。
ちなみに筆者が店を開くのであれば、競合のない場所で細々とやりたいかなと思います。
ただでさえボードゲーム人口は少ないですし(増えてきているとはいえ)、そんな状況で潰し合いとか嫌ですしね。
しかし人口の少ないところだと、商売を成り立たせるのは難しそうですね。
競合がいないということは、裏を返せば商売して利益を出すのが難しい地域という意味でもありますので。
開業するのであれば、当然地域のリサーチはしているでしょうから。
ちなみに台湾は結構ボードゲームが流行っていて、おもちゃ屋以外にも、書店にも普通にボードゲームの陳列棚があったりします。
日本もそんな感じで、ボードゲームが一般的になっていけばと思います。
ボードゲームカフェの開業については、今後もちょくちょく書いていく予定です。