【Vic3】新たな貿易システムをわかりやすく解説【アップデート1.9以降】
『Victoria3』のアップデート1.9で貿易システムが大幅に変わりました。

いわゆるAmazonシステムがつかえなくなったのですね。それについて簡単にサクッと説明していきます。詳しい情報については開発日記#151の翻訳解説記事も参照してください。
貿易システムの変更
なぜ貿易システムが変わったのか
今回の貿易システムの変更ですが、以前までは利用できる市場にならんでいる欲しい物をポチる形でした。

このシステムの問題点としては、いわゆる現実世界での貿易のように他国に買い負けるという状況が発生しにくいわけですね。
例えば日本は現在、うなぎやサンマが高くなっていますが、これは昔と違って中国や台湾の人たちも食べるようになってきたため、世界市場的には値段が上がってしまっているわけです。
買い付けるためには、それぞれの業者が買い取り価格を高くしないといけません。
日本の業者は中国に買い負けないためにも高い価格で買うしかないわけで、そのぶんが消費者に転嫁されて値段が高くなるわけです。

売っている業者側からすれば、高く買ってくれさえすれば、べつにどの国の業者が買おうがどうでもいいわけです。世界市場で価格が決まるので、国がどうこうする話ではないのです。「どの業者でもいいから、高い金額を出したやつに売る」というだけの話です。
今回のDLC「Charters of Commerce」もこの業者(企業)のふるまいに的を絞った内容になっていますね。そのため、ある意味今回の貿易システムのアップデートも必然だったといえましょう。

そもそも政府が決めるのは関税であって、こういう個別の取引をどうこうするな話ではありません。個別取引をしているのは企業です。
布や鉄、肥料が具体的にいくら必要かとかは、政府が決めることではなく、企業の生産計画によって決まります。発注するのも当然企業です。
そのため今回のアップデートとしては、1対1の取引ではなく、一番上位にある世界市場というものを設けて、そこで各業者が自主的に取引をしていくという形になっています。

そういうことになりますし、現実的にもそうですね。
日本政府がニンテンドースイッチ2の生産計画に関係して、その部品を発注しているわけではないのです。部品調達はニンテンドーのやることです。

関税で輸出入をコントロール
ちょうどアメリカではトランプ関税が世界を騒がしていますが、国家が輸出入をコントロールしようとすると、関税を変更する必要があります。
簡単にいえば、輸入関税を上げれば自国市場での輸入量は減ります。
逆に輸入関税を下げたり、買い付けるための補助金を出したりすれば、輸入量は増えます。
今回の貿易システム変更は、この関税でのコントロールになっているのですね。

輸入だけでなく、輸出に対しても関税がかけられます。
企業というのはあくまで利益優先なので、商品の引き取り手が国内だろうが国外だろうが関係ないのですね。
たとえば国内で「弾薬」が足りない。しかし世界市場のほうが値段が高いと、企業は世界市場に売りたがるわけです。
そうなると国内の「弾薬」が減ることになるわけです。戦争をするときに困るわけですね。
だったらどうするかといえば、輸出に関税をかけて、企業にとって海外で売る方がもうからない状況をつくるのですね。

本作では税率のコントロールが3段階までできるようになりました。0は関税無し、それより右は補助金をつけるということですね。
逆に輸入ですが、海外に安い物をつくられると、みんなそっちを買います。これは現実でもおなじですね。

しかしそうなると、国内産業は利益を出せません。
そこで輸入に対して関税をかけて、輸入品を高くします。
そうすれば輸入量は減るので、そのぶん国内品を消費させることができます。

現実はそうですが、現状本作ではそこまではシミュレートされていません。
単純に関税率で輸出入をコントロールする形になっていますね。
そのため、物不足を避けたい場合、
→輸出に高関税&輸入の関税を下げる(場合によっては補助金も)。
ということになります。逆に、国産品を売りたい場合、
→輸入に高関税&輸出の関税を下げる(場合によっては補助金も)。
となります。

世界市場と取引所の貿易優位性について
今回新しく出てきた世界市場ですが、取引可能な国家の市場を統合した市場になります。
つまり自国市場も世界市場の一つと考えてください。
企業側からすれば、自国市場から買わないという選択肢もあるわけです。

そして世界市場の価格というのは、各国がおなじ価格・量で輸出入できるわけではないということにも注意してください。
これを貿易優位性といいます。
貿易優位性は州ごとの取引所レベル(貿易キャパシティ)や、輸出入先の国家との関係によっても違ってきます。
ただ貿易するのはあくまで州ごとなので注意してください。世界市場で表示されているのは国の平均値です。
取引所を持っている州ごとに、独立した貿易優位性を持っています。

取引所は州ごとに建設しないといけません。
インフラとおなじで、取引所を多く作れば貿易キャパシティを上げられます。それだけ多くの商品を取り扱えるということですね。そして貿易優位性も上がります。
貿易優位性が高い=商品が安い・仕入れやすい、低い=商品が高い・仕入れにくいと覚えておけばいいでしょう。
そして世界市場で表示される貿易優位性は国家の平均値(平均優位性)です。つまりその国家の取引所が一州しかなくて、そこの貿易優位性が高ければ、数字としては高い数字が出ます。実際の輸出入量は違うので気をつけてください。

禁輸について
貿易優位性には国家間の関係もあります。
相手国に対して禁輸をした場合、貿易優位性が低くなるので、自国の輸出商品は高くなるわけです。

そうですね。
たとえばゲーム開始時、「染料」を一番多くイギリスから輸入している国はフランスです。
フランス市場の「染料」の貿易優位性は+8%で、輸入価格は-2%安くなります(実際は州によって変わる。あくまで平均)。
それでフランスに対してイギリスが禁輸を仕掛けると、「染料」の貿易優位性は-11%まで減少し、輸入価格が+3%に増加します。
価格が上がったことにより、時間とともにフランスの「イギリス産染料」輸入量も44から16に減りました。

あくまで貿易優位性が減るという話で、商品自体は買えるのですね。
現実問題、禁輸してもいくらでも迂回して輸入することはできますしね。ただそのぶん調達コストは上がりますし、輸入量は減ります。そういう意味で「貿易優位性低下=価格上昇・輸入量低下」なわけです。
戦争になるとたがいに禁輸をしかける形になるので、たがいの貿易優位性が下がるわけです。

清がお得意先の「アヘン」ですが、ゲーム開始時はイギリスから359も調達し、貿易優位性も+11%あります。
イギリスが禁輸を仕掛ければ、貿易優位性は-75%まで一気に下がり(時間とともにさらに低下)、イギリスからの輸出量も160まで下がります(こちらも時間とともにどんどん下がる)。
なぜ先ほどの「染料」と違ってここまで一気に下がるかと言えば、世界市場に出回っているアヘンのほとんどがイギリス産だからです。そしてそのほとんどを買っているのが清だからです。

この貿易優位性というのは相対的なものですから、清の貿易優位性が下がれば、当然他国が買いやすくなりますので、他国の貿易優位性が上がるということですね。この禁輸を仕掛けた後は、他国の貿易優位性が大きく上がっていきました。
逆にいえば、清の貿易優位性が落ちたことで、他国に比べて買い負けやすくなったということです。他国より高い値段を出さないと買えないような状況ですね。

まとめ
以上のように、これまでの「欲しい物をポチる」方法から、各州が世界市場で貿易優位性に基づいて自主的に買い付けをしていくという形に変わりました。
そのためには各州が「取引所」をつくって、貿易キャパシティを上げていく必要があります。

国家の決めることはあくまで関税ですね。関税で輸出入量をコントロールします。
また他国に自国のものをあまり買わせたくなければ禁輸を仕掛ければいいですが、完全にシャットアウトするのは無理で、あくまで貿易優位性を下げるという話ですね。
もちろんアヘンのように、特定の国が市場を独占してしまっているような商品の場合、その国に禁輸されると貿易優位性が大幅に下がります。
貿易システムが大幅に変わってしまったため、いろいろとまどうとは思いますが、慣れていくしかないでしょうね。