「難易度」と「難度」どっちが正しい?違いについて
「難易度」という言葉がよく使われますが、一方で「『難度』が正しい。『難易度』は日本語的に間違っている」と主張する人もいます。
そうですね。むしろ「難度」を使う人のほうが少ないとは思います。
それで今回は「難度」と「難易度」どっちが正しいのか、そのことについて話していきます。
「難易度」or「難度」?
中国語的には「難度」が正しい
そもそも漢字というのは中国から来た文字(言葉)です。
それが日本で加工されて、日本語の文字となりました。
ひらがな・カタカナも漢字が変化したものですね。
まず最初にいいたいのは、中国語的には「難度」が正しいです。
というのも、中国には「難易度」という言葉はありません。
そのため中国語においては「難易度」という言葉は間違っているのです。
日本で変化する漢字
漢字が日本に入ってきたのち、「日本オリジナルの漢字」というものがあらわれました。いわゆる「和製漢字」ですね。
「辻」とか「働」とか「峠」とか、これらは中国に存在しない漢字です。
それ以外に「経済」も中国にはなかった漢字の組み合わせで、幕末明治期の洋学者・神田孝平が「economics」を「経済学」に訳したのが始まりといわれます。
それが中国に輸入されて、中国でも使われるようになりました。歴史的にはけっこう最近です。
そのため「『難易度』は日本語的に間違っている」というのも変な話です(「中国語的に間違っている」なら正しいですが)。
「難度」より「難易度」が多く使われている現状、漢字の歴史から考えれば、そのような言葉が生み出されるのも特殊なことではありません。
「難易度」という言葉はどうやって生み出されたのか?
ここで考えなければならないのは、そもそも中国語に存在しない「難易度」という言葉がどこから来たのかという問題です。
日本で生み出されたのはあきらかです。日本人しか使っていませんので。
それで「難度」に簡単を意味する「易」が加わっているので、偏差値やゲームなど、基準から下方向のものが存在することによって付け加えられたのではないかと思います。
「難度」とは基本的に、「難しいこと」に対して使われる言葉です。
体操で「難度の高い技」「高難度の技」という言葉が使われますが、これは「基準」があってそれ以上の難しい技を繰り出しているから、これで正しいのです。
視覚化すると、
(基準)→難しい
の形ですね。
一方でゲームでは、ゲームの難しさが「ノーマル(普通)」以外に「イージー(簡単)」「ハード(難しい)」が用意されています。
つまり、「普通(基準)」以下が存在するのですね。
体操で普通以下の技を出す必要性はありませんので「難度」でよいのですが、ゲームだと「普通(基準)」以下、すなわち「簡単」の選択肢があるのです。
視覚化すると
簡単←(基準)→難しい
となります。簡単方向も表現に加えるためには「難度」だけだと変なので「難易度」となってしまったのでしょう。ある意味、親切心でそうなってしまったのかと。日本人らしいとは思います。
競技の世界では「難度」が正しい
話を戻しまして、競技の世界では基準から上をめざす必要があります。
競技をしているのですから、あたりまえですね。
いかに難しいことをするかが重要なのです。
(基準)→難しい
なので、難しいの方向にしか進みません。
そのため、「易」は必要ないので、「難度」が正しいといえます。
ゲームの世界では「難易度」が正しい
一方、ゲームでは「イージー(簡単)」が存在します。
基準があって、それより簡単ということですね。
簡単←(基準)→難しい
なので、「難しい方向」も「簡単方向」もあるため、「難易度」を使った方が「易(簡単)方向」も表現できるでしょう。
まとめ
まとめると、
・競技など「いかに難しいことをするか」を競う場合は「難度」が良い。
・ゲームなど「簡単」もある場合は、どちらの方向も表現するために「難易度」が使われる。
となります。
ようするに「難易度」は、「簡単」方向を表現するために生み出された漢字ともいえますね。親切というかおせっかいというか日本人らしいというか。
このことを踏まえると、勉強でも、
・難度の低い問題(基準に近い問題)
・難易度の低い問題(基準より簡単な問題・基準以下の問題)
で意味が変わってくるとは思います。
「「難易度」とかいらねーよ、「難度」だけでいいよ」
という人もいるとは思いますが、言葉は進化していくものです。
自分がどう考えるかは自由ですが、「難易度」が普通に使われている現状、競技以外で「難度」をまわりに押し付けるのはどうかとは思います。
たとえばみんなで楽しそうに、
「このゲーム、難易度低いからおすすめだよ」
とワイワイ話しているところで、
「「難易度」じゃねーよ、「難度」だよ!」
とかいいだしたらどうでしょうか。
やさしい友人たちなら苦笑いしながらも、心の中で(こいつ面倒くせえ…)と思われるだけとは思います。
そんなわけで、日本はつい最近まで「経済」とか新しい漢字をつくっていましたし、日本の生み出した漢字「難易度」が通じる現状、目くじらを立てる必要性はないのではないかと思います。