ローグライクとローグライトの定義・違いをわかりやすく徹底解説【Roguelike or Roguelite?】

2023年6月1日ゲーム解説ゲーム論, ローグライク

ローグライク

ローグライク(Roguelike)」という言葉はよく耳にすることがあると思いますが、最近では「ローグライト(Roguelite)」という言葉もあちこちで見かけるようになりました。

ローグライクは分かるけど、ローグライトってなにニャ?

そういう人(猫?)も多いでしょう。

「ローグライク」だと思っているものを、「それ、ローグライトだよ」と指摘されてもやもやとした思いを持った人もいるかと思います。

ローグライクやローグライトという言葉はどうやって誕生したのか、なぜ多くの人がローグライトをローグライクといっているのか、そもそも分けなければならないのか、将来的にはどうなるのかなどについて論じていきます。

また本サイトにおいてローグライクとローグライトの使い分けをするかどうかについても述べていきます。

 

ローグライクの成り立ち

「ローグライク」という言葉はよく耳にしますが、そもそも厳密にはどういう意味なのかを知っている人は少ないかと思います。

というより、「ローグライク」というジャンルとしてとらえてしまっているかと思います。

つまり、「死んだら復活無し」「ランダムマップ」「難しい」という感じのゲームを、なんとなく「ローグライク」と呼んでしまっているのでしょう。

まずいのかニャ?

通じているのであればべつにまずくはありませんが、ここでは「ローグライク」という言葉の成り立ちから考えていきたいと思います。

 

『ローグ』とは?

「ローグライク(Rogue-like)」とは「『ローグ』のような」という意味です。

つまりおおもとである『ローグ』をまず知る必要があります。

Rogueって悪党のことニャ。ゲームが悪さをしてくるからなのかニャ?

たしかにローグライクは意地悪なゲームが多いですが、ここではそういう意味ではありません。

1980年代に『ローグ』というダンジョン探索型のPCゲームが誕生しました。そのコンセプトを受け継いだ「『ローグ』のようなゲーム」をローグライクといいます。

どんなゲームなのかニャ?

昔のゲームですからグラフィックとかはなく、アスキー文字で表現されています。

rogue

たとえばプレイヤーは「@」、敵は「S(Snake)」「B(Bat)」「D(Dragon)」みたいな感じですね。ランダム生成されるマップもすべてアスキー文字で表現されます。ベーシック時代のプログラマにはなじみ深いかと思います。

部屋に通路、これ『トルネコの大冒険』ニャ!

そうですね。『ローグ』をグラフィカルにすれば『風来のシレン』や『トルネコの大冒険』のようなマップになります。

そのためそれら『ローグ』の特徴を持っているゲーム、つまり「『ローグ』のようなゲーム」は「ローグライク」と呼ばれています。

 

『ローグ』の特徴

なんとなくわかってきたニャ。部屋と通路があるのが「ローグライク」ニャ。

そういうわけではないのですが、『ローグ』にはほかにも以下のような特徴があります。

・ランダム生成されるダンジョン

・戦闘はリアルタイムではなくターン制。プレイヤーが動いたあとに敵が動く。

・死んだらすべてを失う。最初からやり直し。

・食料を取らないと餓死する。

ますます『トルネコの大冒険』ニャ。

『ローグ』の登場後、さまざまなローグクローンやローグライクが現れました。

しかし『ローグ』の一部の要素を受け継いだだけで、古参のゲーマーからすれば「これ『ローグ』と似てないよね?」と思うような作品も数多く登場します。

ローグライクを名乗る作品数がどんどん増えていくという状況のなか、「ローグライク」を定義しようという動きがあらわれました。

 

ローグライクの定義

ベルリン解釈(Berlin Interpretation)

2008年、ドイツのベルリンでローグライク開発者の世界会議「International Roguelike Development Conference 2008(IRDC2008)」が開かれました。

世界会議なんてあるのかニャ。

IRDC2008においてローグライクの定義づけが以下のようにされています。『ローグ』の要素は「価値の高い要素」と「価値の低い要素(無視してもいい要素)に分けられています。

価値の高い要素

・ランダム生成される環境:マップやアイテム、敵の自動生成・配置。ただしそれらの外見は固定したものである。またプロットやパズル要素などの固定コンテンツは除く。

・恒久的な死:死ぬと最初のレベルに戻されます。

ターン制:リアルタイムではなく、プレイヤーが動いたあとに敵が動きます。

モード無し:移動も戦闘もすべて同一画面でおこないます。戦闘画面への切り替えはおこなわれません。

・複雑性:ゲームの解き方は単一ではありません。

・リソース管理:食料やアイテムなど限られたリソースを管理し、使い方を考えなければなりません。

・ハック&スラッシュ:多くの敵を倒すことは重要。ハクスラ要素。

・探索と発見:ダンジョンの調査、アイテムの鑑定や使用方法の発見。

価値の低い要素

・一人プレイ:プレイヤーは一人のキャラを操作します。

・モンスターもプレイヤーとおなじ条件:プレイヤーに適応されるルールは、モンスターにも適応されなければなりません。

・戦術的な挑戦:ゲームは一回でクリアできるようには作られていません。プレイヤーは戦術について学ぶ必要があります。

・アスキー文字の画面:元祖『ローグ』のようなアスキー文字で作られた画面。さすがにいまの時代には無理かと。

・ダンジョン:ゲームはダンジョンで構成されています。

・数字:ヒットポイントなどがすべて数字で表示されています。

読んでるだけで面倒くさくなったニャ。これぜんぶ当てはまらないといけないのかニャ?

あくまで「だいたいこんな感じ」という定義なので絶対ではありません。というより、かなり曖昧さがあります。

いってしまえば「会議でこう決まった」というだけにしかすぎず、一般の人たちが従わなければならない理由はいっさいありません

そりゃそうニャ。勝手に決めて押し付けられても困るニャ。

当然反発する人たちもいるでしょう。

つぎに世間一般でいうローグライクの定義を見比べてみましょう。

 

世間一般のローグライク認識

そもそも現在のゲーマーの大半は『ローグ』を知りません。遊んだことのない人のほうが圧倒的に多いでしょう。

そのため「ローグライク」と聞くと、「ローグ」と「ライク」が分かれたものではなく、「ローグライク」というひと塊の単語(ジャンル)として受け止めるかと思われます。

一般的に「ローグライク」というと、以下の要素のあるゲームでしょう。

・死んだらやり直し。コンティニューなし。

・マップが毎回ランダム。敵の配置もランダム。

・アイテムドロップもランダム。

・ランダムイベントが発生。

・とにかく難しいゲーム。

だいたいこんな認識ニャ。

曖昧ではありますが、「なんとなくこれはローグライク」というイメージが現代のゲーマーのなかで浸透しているかと思います。

「ベルリン解釈」自体を知っている人が少ないですし、繰り返しますがそもそも『ローグ』を知らない以上、上記のような認識になってしまうのは仕方のないことなのです。

つまるところ、「ベルリン解釈」と現在のゲーマーとのあいだに認識の差異があらわれているのです。

 

ローグライトという概念

「ベルリン解釈」を尊重したとすると、現在「ローグライク」といわれている人気ゲームのほぼすべて解釈に当てはまりません

ベルリン解釈におけるローグライクとは、あくまで『ローグ』というゲームの進化系なのです。

『ローグ』と違うものはローグライクとはいいません。

例を挙げて話しましょう。

roguelike2

有名なSFゲーム『FTL: Faster Than Light』。ランダム生成された星系マップを進んでいき、そのさきざきでランダムイベントが起こります。

ローグライクといわれてるゲームニャ。

しかしこれが『ローグ』――いや、『ローグ』でたとえるからわかりづらくなるのですね。

トルネコの大冒険』や『風来のシレン』に似ていますか?

ぜんぜん似てないニャ。

つまりそういうことです

これはローグライクではないのです。『トルネコの大冒険』ーもとい『ローグ』に似ていないのですから。

つまり厳密にはローグライクではないけど、「死んだら終わり」「ランダムマップ」という『ローグ』の要素があるものです。

ゲーム評論家のTotalBiscuit(John Peter Bain)氏は、それらを「ローグライト(Rogue-lite)」という概念で位置付けました。

『トルネコの大冒険』と『FTL』が違うように、『ローグ』を知ってる世代からすれば『ローグ』と『FTL』は違うのです。

なんとなく違いがわかってきたニャ。『トルネコライク』『トルネコライト』のほうがわかりやすかったニャ。

『ローグ』を知らない世代からすればそうですね。『シレンライク』『シレンライト』でもいいかもしれません。

『ローグ』をやったことがない人が多いのに、分類するからわけわからなくなるニャ。

たしかにそれが一番の問題で、ローグライトの概念を分かりづらくしている部分です。

 

海外におけるローグライトの認識

海外におけるローグライトの評価を、いろいろな掲示板で拾ってきました。わかりやすいように一部内容を混ぜて書いています。

ローグライト賛成派

・言葉が新しくていい。ローグライクは古い表現。

・もはやローグライクの時代ではない。

・『ローグ』とは違うのだから分けたほうがいい。

ローグライト否定派・どっちでもいい派

・ローグライトは私の知るかぎりでもっともバカげた分類だ。

・ローグライトをローグライクといっても誰も気にしない。

・死んだらやり直しでランダム要素があるものが「ローグライク」で通じているのだから、いまさら言葉を増やす意味がわからない。

・8歳児が「トマトは果物だよ。野菜じゃないよ」というのに似ている。

・そもそも「ライク」を個々人がどうとらえるかの問題。その人が「ローグのような」と思ったら、それはすべて「ローグライク」。

・分けるのが面倒だし、ローグライクで通じる。

いろいろな意見があるニャ。

ローグライトという言葉がすんなりと受け入れられているわけではないようです。

ゲーム開発側ではローグライトと表記するゲームも増えてきてはいますが、言葉の知名度の問題からあえて「ローグライク」と書いたり、「ローグライク要素のある~」と書いたりしています。

ローグライクという言葉が有名になりすぎたニャ。

あと必要性の問題ですね。

一般の人にとっては、もとの『ローグ』を遊んでいない以上、ライクもライトもおなじようなものなのです。

分けるために知識を仕入れたり頭を悩ませたりするぐらいなら、すべて「ローグライク」で済ませてしまったほうがいいと感じるのかもしれません。

一番の問題は「ローグライク」と「ローグライト」の分類が原因で、不要な対立がユーザー間で起こってしまうことでしょう。

自分の定義を押し付けるのはよくないニャ。

ローグライトをローグライクといっても通じますし、分類に必死になる必要はない気はします。

 

本サイトでのローグライクの分類

筆者の見解としては通じればどちらでもいいです。

ローグライトはまだそれほど知れ渡った言葉ではないので、積極的には使いづらいというのもあります。

またサイトのカテゴリーで「ローグライク」と「ローグライト」を分ける必要性があるかといえば、ユーザーの利便性から考えて分けないほうがいいかと思います。

基本的にはローグライクもローグライトも「ローグライク」(もしくは「ローグライク要素のある」)を使いますし、カテゴリー分けも利便性や必然性の問題からしないと思います。

ただし今後ローグライトが浸透してきたばあいには、そのかぎりではありません。あくまで通じるか通じないかの問題です。

 

まとめとローグライトの将来

ローグライクとローグライトの違いについて分かりやすくまとめると、

ローグライク:『ローグ』の進化系。『トルネコの大冒険』や『風来のシレン』みたいなゲーム

ローグライト:『ローグ』の要素の一部を持った作品。『トルネコの大冒険』や『風来のシレン』とは違うけど、「死んだら終わり」「ランダム要素」などを持った作品。「ローグライク」と呼ばれている現在の作品のほとんどがこちら。

となります。

『トルネコの大冒険』基準で考えるとわかりやすいニャ。

ただローグライクという言葉が浸透しすぎているため、新たにローグライトの分類を入れても必然性を感じない人が多いとは思います。

そのためローグライトという言葉を個人的に使うのはいいのですが、他人に押し付けると争いのもとになるのでやめたほうがいいでしょう。

ローグライクで通じるならローグライクでいいのだと思います。

本人が「ローグのようなゲーム(ローグライク)」と思っていれば、どんなものでもローグライクになるでしょう。「ライク」のとらえ方が人によって違いますしね。

あくまでローグライトは「定義の一つ」でしかないのです。それにローグライクとローグライトの線引きも現状は曖昧です。きっちり分けられるものでもありません。

ローグライトという言葉が将来浸透するかはわかりません。大企業がヒット作に「ローグライト」と銘打てば一気に知れ渡る可能性もあります。

本サイトでは両者をとくに分けて使いませんし、将来的にローグライトが浸透したときは分けて使うこともあるでしょう。そのあたりは柔軟にやっていこうかと思います。