『神獄塔 メアリスケルターFinale』ストーリー・エンディング考察【ネタバレ注意】

ゲーム解説RPG, 攻略

Mary Skelter Finale

複雑なストーリーが魅力の複数パーティ制ダンジョンRPG『神獄塔 メアリスケルターFinale』。

Compile Heart, Idea Factory, Ghostlightが開発し、Idea Factory Internationalによって、2023年9月13日にSteamで配信されました。

エンディングまでクリアして「ちょっと意味わからん」という部分が多い作品でもあるので、今回はストーリーやエンディング、ジャックたちの正体、物語のテーマについての考察です。

全部が描かれているわけではないので、考察が必要なのニャ。

もちろん筆者の考察なので、正しいとはかぎりませんあくまで考察です。

考察なのでネタバレだらけになりますので、まだクリアしていない方は注意してください。

引き返すならいまのうちです。

いまのうちニャ。

それでは始めていきます。

 

『神獄塔 メアリスケルターFinale』考察

ざっくり全作品のストーリーまとめ

本作は3部作になっており、時系列としては2→1→Finaleとなっています。

時系列順にざっくりあらすじを見ていきます。ネタバレだらけになっています。

メアリースケルター2

1の過去の話。おつう人魚姫が主人公。

おつうは元ナイトメア(都庁ナイトメア)で、2でナイトメア化したジャック(1の主人公)と意思疎通ができるのもそれが理由です。死んでしまった人魚姫を助けるため、「ウィッチクラフト」に時間の巻き戻しを願いループした世界を人間としてスタートさせます。

2の物語はこの偽の歴史から始まります。元ネタは「鶴の恩返し」ですね。

しかしおつうが時間を巻き戻して歴史を変えてしまったことで、他の血式少女たちが悲惨な結末を迎えることになります。

そして最後におつうは、人魚姫の願いによって、時間ループをなかったことにして歴史を元にもどし、血式少女たちの運命を救います(これで1に続く)。

しかしその代償として、人魚姫は当初の運命通り死んでしまいます。

バッドエンドなのニャ。

メアリースケルター

2でおつうが最後に時間ループをなかったことにした本当の歴史

主人公ジャックアリス、その他の血式少女たち監獄塔(ジェイル)から脱出を目指す話です。

ラスボスは黎明解放戦線のリーダーである十島博士に擬態した異星人のスナークジェイルの種を地球に持ち込み、滅びた母星を再生させようとしていました。

整備班のハルも異星人の仲間で、スナークが思い直すことを期待していましたが、そうなりませんでした。

ジャックたちはスナークを倒してジェイルからの脱出に成功しますが、地上世界はすでに崩壊していました。

1のリメイク版では、人魚姫をおつうがよみがえらせて、それなりにハッピーエンドになります。

メアリースケルターFinale(本作)

地上に出たジャックたちを待ち構えていたのは、荒廃した世界と、処刑台少女(ジェノサイド・ピンク)たちでした。

処刑台少女の力は圧倒的で、血式少女たちは各地にバラバラにわかれてしまいます。こうして本作は複数のチームを切り替えつつダンジョン踏破をめざすザッピングシステムになっています。

正直、これが思ったよりも面倒。アイテムの受け渡しとか、ダンジョンの仕掛けを解いたりとかで、かなりややこしいです。

このシステムは賛否両論なのニャ。

ラスボスは地上生存者の賀東。味方のふりをしつつ、陰で処刑台少女たちを操っていました。そのうちの一人は賀東の妹です。

賀東は何度も繰り返される時間ループの中で生きており、その引き金になるのがアリスの死なので、アリスを生かすために動いています。

最後は地上に月を落として世界を崩壊させようとしますが、ジャックたちによって止められます。

賀東は人間であることを誇りに思っている差別主義者で、処刑台少女や血式少女を化け物として憎んでいました。

最後はジャックたちに逆転する方法もあったのですが、化け物の手を借りたくないとのことで塔からとびおりて命を絶ちます。

ジャックは世界を救うため、ウィッチクラフトに願いをしますが、このあたりはあえてなにを願ったのかなどは描かれていません

ウィッチクラフトは願いを悪い方向へかなえてしまうリスクがあるので、下手に願いをいうことができないわけです。

そして最後の緑あふれる平和な世界がなんだったのかも、プレイヤーの想像にまかせる感じで話が終わっていきます。

これについてはあとで考察していきます。

けっきょく「監獄塔(ジェイル)」とはなんだったのか?

本作の舞台となる「監獄塔(ジェイル)」がけっきょくはなんだったのかという点についてですが、人間の絶望エネルギーを食らうために世界の時間ループをつくりだしている装置といえます。

監獄塔は、「監獄」と呼ばれる異形の世界を創り出して、血式少女たちに脱出劇を何度も演じさせていました。

これを延々と繰り返すことで、自分(監獄塔)を維持していたのです。

どういうことニャ?

賀東が最後のほうで話していたことと関係しますが、昔、人類は大きな戦争や災害を繰り返し、地上はボロボロとなりました。

人間たちは生きる希望を失い、「世界など終わってしまえばいい」と絶望したのです。

賀東がその「人間」を体現した存在ですね。

その絶望エネルギーが極限に達したとき、そこから出現したのが監獄塔です。

ダンガンロンパ』的な絶望病の結果なのニャ。

監獄塔は人間の絶望からできています。

エネルギー源は人間の絶望なのですね。

その絶望エネルギーを供給するために人間を監禁し、苦しませることで生き続けました。

またジャックや血式少女たちを生み出し、脱出劇を何度も繰り返させることで、彼ら彼女らから絶望エネルギーをもらっていたのです。

そしてアリスの死などによって絶望エネルギーの供給が少なくなれば、世界をリセットして時間を巻き戻します

これを繰り返すことで、延々と絶望エネルギーを供給し続けられるということです。

つまりジャックたちは監獄塔が生き延びるために利用されていたのニャ。

そういうことになりますね。賀東はこのループの外にいる存在です。

監獄塔は人間の絶望がつくりだしたものなので、各階層には、人間社会や物語の断片がねじ曲がった形で再現されています。

だから、童話のモチーフ(赤ずきん、白雪姫など)があちこちに現れているのですね。

つまり、「人間の心の奥底にある物語や希望すらも監獄塔に利用されている」という設定なのです。

希望は無いのニャ。絶望的な設定なのニャ。

まとめると、監獄塔は自分が滅びないためにループ構造をつくりあげ、血式少女たちは塔の意志によって「戦う役」を何度もやらされていたということになります。

ジャックの正体

本作の主人公であるジャックの正体ですが、監獄塔によって意図的につくりだされた存在ということになります。

ジャックの役割は、血式少女たちを導き、ループを維持することですね。

監獄塔が必要な絶望エネルギーを得るため、血式少女たちをまとめあげる調整装置」が必要なわけです。

ジャックの「血が、血式少女たちを癒したり正気に戻す効果があるのもそのためです。監獄塔によってそういうふうにつくられているのです。

これがジャックの存在理由ですね。

監獄塔がつくった装置の一部なのニャ。

つまりジャックが血式少女たちをまとめて、がんばって脱出をしようとするのも、すべて監獄塔の計画通りなわけです。

そして我々プレイヤーも、それを知らずに頑張ってゲームをクリアしようとするわけです。

ぜんぶ監獄塔の計画通りなのニャ。

アリスの正体

同様にアリスの正体ですが、こちらも監獄塔によってジャックを守るためにつくられた存在といえます。

血式少女をベースにして、監獄塔に改造された少女ですね。

精神が非常に不安定(暴走しやすい)のも、この出自によるものです。

このアリスを観測する存在として、「姉」としてのシャーロットと、精神的なバランサーとしてのメアリーがいます。彼女たちがチームを組むのは必然だったということになります。

ジュウの正体

ジュウは十島博士から記憶・人格を切り離された存在です。

ジュウの人格はループの終焉を目的として投下されたものですが、「感情を持たせることで判断のゆらぎを生む」という設計のため、記憶を封印しました。

そのため、彼は十島博士でありながら、十島博士であることを忘れている存在となります。

なぜジュウを存在させたかといえば、十島博士自身が自分の過ち(監獄の永続、血式少女の運命)に気づいていたからでしょう。

しかし自分自身では、すべてを壊す決断ができませんでした。

そこで、自分の「人間的な側面」を持つジュウを分離して過ちの修正を託したのでしょう。

ジュウは記憶喪失ですが、「血式少女たちを守る」と「監獄塔と戦う」という行動だけは本能的に貫いていました。

そして最後は記憶が戻り、自分の命を投げ出してまで、血式少女たちを救います。

妻をさがしている」ということですが、十島博士はAIに妻の人格データを入れているため、ジュウは最後に妻(AI)と出会うことができます。

血式少女と処刑台少女の正体

監獄塔が絶望をエネルギーとするため、ジャックを利用して血式少女(希望)に脱出劇を演じさせる一方で、処刑台少女(絶望)を用意していました。

希望を持たせて地上に上がったら、そこには荒廃した大地が広がっていました。

それだけでも絶望なのですが、さらに登場したのが処刑台少女です。

登場時は血式少女たちを圧倒するほどの力(絶望)を見せます。

これらも監獄塔による舞台装置ということになりますね。

賀東の目的と思想

絶望と破滅を願っている賀東も、ある意味監獄塔に利用された存在ともいえます。

賀東の思想は「人間の希望や可能性を信じることを完全に捨てる」というものなので、絶望エネルギーを集める監獄塔の目的と一致しているのですね。

しかし一方で、賀東はループの外にいる存在なので、彼は無意識に利用されていたわけではなく、むしろ自分の思想を実現するために監獄塔を利用していたことにもなります。

おたがいに利用し合っていたのニャ。音楽性がおなじだったのニャ。

そのため、場合によっては音楽性の違いで分裂することはあるということですね。

ジャックたちが「希望を信じる者」なら、賀東は「絶望を信じる者」という対比になっているわけです。

ジャックは最後まで賀東を救おうとしましたが、そもそもこの絶対的な思想の違いによって、どうにもなりませんでした。

Finaleの最後で起きたこと

監獄塔によってつくられたジャックとアリスという存在ですが、本作の最後ではその役割から抗うことを選びます。

最後、ジャックは「もうこんな世界を終わらせよう」と決意し、ループを断ち切ります。

監獄塔からの物理的な脱出ではなく、監獄塔につくられた運命から脱出したということですね。

ジャックたちは無理に勝とうとせず、運命そのものを壊しました。

他者(ウィッチクラフト)まかせで願いをかなえることを捨て、自分の力で未来をつくることを選んだーーつまり監獄塔のつくる脱出ゲーム(物語)そのものを終わらせたということです。

管理されたゲームすることをやめたのニャ。

最後に見た緑あふれる世界は現実世界ではない可能性もあり、自由になった心の象徴的な世界ともいえます。

希望が可視化された世界ですね。

本当にループの外に出て地上に戻ったのか、どこか別の場所にいるのかは、そのあたりはプレイヤーの想像に任されています。

ここで物語のテーマとして重要なのは、人類が管理された世界(監獄塔)から脱出して、もういちど自分の力で生きる世界を始めるという部分です。

他者からの管理ではなく、自分の力で未来をつくっていくということですね。

ジュウ(十島博士)は命を捨てて過去を清算し、ジャックは未来へと進んでいきました。このあたりも物語としての対比になっています。

 

まとめ

本作のテーマとなっているのは、最後のほうでも述べたように、「他者による管理からの脱出」と「自分の力で未来をつくる」という部分です。

ジャックたちはひたすら努力し、さまざまな敵とたたかって監獄塔から脱出しようとしますが、それすらも絶望エネルギーの供給を得るための監獄塔の思惑どおりなのです。

ジャックやアリスは監獄塔が用意した存在で、血式少女たちをまとめて何度も絶望を味わせ、何度も世界をループさせる目的で行動させられていました。

地上に出るという希望を得ても、またそこで荒廃した大地と処刑台少女という絶望が登場します。

すべては監獄塔の管理下におかれており、絶望エネルギーを得るというシナリオどおりに脱出劇が繰り返されていたのですね。

この運命から脱出するため、ジュウ(十島博士)は過去を清算し、ジャックは自分たちの手で未来をつくることを選びました。

他者(ウィッチクラフト)まかせで願いをかなえることをやめ、自分たちの力でやり直す(未来をつくる)というのが、本作の最後に描きたかったことだとは思います。

他者の力にたよることは、管理下におかれるということなのニャ。

なかなか長い作品でしたが、ここでいっていることが全然あっていない可能性もありますが、あくまで考察の一つとして受け止めていただければ幸いです。