『トワイライト・ストラグル(twilight struggle)』攻略法ー冷戦ボードゲーム
冷戦時のアメリカ対ソ連の戦いを見事に表現した名作ストラテジーボードゲーム『トワイライト・ストラグル(twilight struggle)』。以前書いたアメリカ側、ソ連側の対人戦攻略法の記事を一つにまとめて加筆修正したものです
またおまけ的なものとして、Steamのデジタル版の対CPU戦の初心者向け攻略法についても書いていきます。初心者の方はここから読んだほうがいいかもしれません。
『トワイライト・ストラグル』の概要やルールについて知りたい方は以下の記事を参照してください。
基本的な考え方
ゲームの目的
本作の目的ですが、20点ある勝利点を奪い合うことです。
綱引きとおなじで、こちらが+1点になれば相手は-1点。さきに20点に到達するか、ゲーム終了時に相手より点数が多いほうが勝ちです。
もしくは欧州を支配している状態で欧州カードを使うと、その時点で即時ゲーム終了になります。
ゲーム終了までのターン数は10。ただ筆者の経験上、ここまでゲームが長引くことは思いのほか少なく、途中でどちらかが20点に到達するか、欧州カードで試合終了することが多いです。
無駄なことをせず、効率よく勝利点を取っていくことが勝利へのカギになります。
得点カードと勝利点
勝利点を得られるのは各地域のスコアカードを使ったときです。これはしっかりと意識しておいてください。
宇宙開発やカード効果で点数を取ることもできますが、おまけ的なものですし運要素が強いのでこれにたよる戦略は省きます。メインの得点源はあくまでスコアカードです。
スコアカードの登場するタイミングで得点をとらなければ、各国をいくら支配していても意味がありません。
このゲームは欧州、アジア、中東、アフリカなど、地域ごとに点数が決められています。
各地域で何点とれるか、得点カードは何が残っているかを考えながらプレイしましょう。
最初の3ターンで出てくる得点カードは、欧州、アジア、中東の3地域。まずはここを重点的に支配していきましょう。
非係争地は重要
地域の支配には、
存在(Presence):1国でも支配している。
優勢(Dominance):支配係争地が相手より多い、なおかつ相手より支配国が多い。
支配(Control):係争地をぜんぶ占領、なおかつ相手より支配国が多い。
の3種類があります。
支配は困難なので、ゲーム中では存在か優勢で争うことになります。相手に優勢をとらせないよう、気をつけましょう。
もし相手が係争地を多くとって、それらを奪うのが困難なときは、非係争地をとって支配国の総数で相手と同数かそれ以上にし、相手が優勢になるのを避けましょう。
相手を優勢にしないためにも、勝てそうにない地域で非係争地を押さえることは戦略上重要なのです。
支配国の総数が相手とおなじであれば、相手が係争地を多くもっていても優勢になることができません。
点数は係争地の数の差だけになります。
もし優勢や支配状態であれば、係争地の数の差に加え、さらに追加点を相手に取られてしまいます。欧州やアジアの場合は優勢で7点です。20点中の7点ですから、かなり大きいと思ってください。これでゲームが即時終了してしまうばあいもあります。
以下はスコアカードでの影響力による追加点一覧です。点数は前もって把握しておくといいでしょう。
(序盤)
欧州 存在:3、優勢:7、支配:ゲーム終了
アジア 存在:3、優勢:7、支配:9
中東 存在:3、優勢:5、支配:7
(中盤)
アフリカ 存在:1、優勢:4、支配:6
中央アメリカ 存在:1、優勢:3、支配:5
南アメリカ 存在:2、優勢:5、支配:6
東南アジア 特殊カードで、使用後は破棄。タイを占領で2点。ビルマ、ラオス、ベトナム、マレーシア、インドネシア、フィリピンはそれぞれ1点。
とくに序盤のアメリカは不利です。状況に応じて非係争地をとってソ連に総支配国数で負けないようにすることが重要。そうでないと点差をどんどんつけられてしまいます。
つぎにアメリカとソ連、それぞれの陣営でプレイするときの戦略を述べていきます。
アメリカでプレイするときの戦略
アメリカは序盤不利ですが、やりようによってはそこそこ有利に進めることができます。
影響力の初期配置
西ドイツに4、イタリアに3が安定でしょう。定石的な配置ですね。
フランスに影響力を置くと、ソ連側のイベントカードによって影響力を減らされてしまうおそれがあります。置いても損する可能性がきわめて高いです。
イタリアをがっちり守っておけばフランスに侵入されないので、イタリアでの影響力を重視しましょう。
手元に「マーシャルプラン」カードがある場合は、影響力を西ドイツ3、イタリア2、ギリシャ1、トルコ1にして、あとのポイントはマーシャルプランで埋めて支配状態にします。
アメリカ側の各地域での戦略
序盤カードに含まれるスコアカードは、アジア、欧州、中東の3か所です。これをよく覚えておいてください。
この3か所を重点的に攻めることが序盤で重要になります。何度もいいますが、勝利点はスコアカードが出されたときしかカウントされません。この地域以外で頑張っても、序盤のスコアにはならないのです。
地域別に攻略法を書きます。どの地域から先に行くかは相手の出方で判断してください。
欧州での戦略
ソ連のフランス関連のイベントカード「ド・ゴール大統領」(フランスでのアメリカの影響力-2、ソ連+1。さらにNATOカードの効果をキャンセル)が手元にあったら、さっさとイベントを実行させて消費してしまいましょう。
フランスを支配をするのとNATOカードを出すのはそのあとです。このカードが消費されなければ、フランスに置いた影響力がいずれ無駄になります。
安全策をとるのなら、さきにフランスを影響力3で支配したのちに「ド・ゴール大統領」をつかいます。いったん影響力は減るものの、イベントカードの作戦値3でフランスをすぐさま支配状態にできます。
2ターン目以降に「マーシャルプラン」が来たときは、イベントを発動させるよりも4点カードとしてつかったほうがいいです。
大きな点差をつけられないよう、東ドイツとポーランドはあきらめ、西欧の係争地である西ドイツ・イタリア・フランスを死守します。
あとは相手が優勢状態(Dominance)にならないよう、トルコやギリシャなど非係争地もできるだけとって、国の数が相手と同等か上回るように努力しましょう。
支配状態の国の数の合計が相手より多ければ、優勢状態で大きな点数差をつけられるのを防げます。
中東での戦略
とにかくまずエジプトに影響力1を置きましょう。それからリビアの支配に向かいます。
エジプトはたくさん置いてもソ連のイベントカードでひっくりかえされるので、とりあえず1だけ置いておけばいいです。
手元に中東のスコアカードがあるなら、支配してもかまいません。しかしリビア最優先です。
イランもさっさと支配状態にして、イラクがまだ相手の支配状態でなければ影響力1を置きつつサウジアラビアをうかがいましょう。
非係争地もとっていき、支配している国の数を相手に引き離されないように注意しましょう。
アジアでの戦略
「朝鮮戦争」カードが消費されるまでは、韓国に手をだすのは危険です。
マレーシアに1ポイントを置いてタイをさっさととってしまいましょう。
タイは相手も狙ってくるので、影響力2だけでの支配は不安。3以上は積んでおきたい。
あと安保条約のカードがある場合は、イベントは発動させずに作戦点4のほうをつかいましょう。
日本にはすでに影響力1があるので、残りの3ポイントをおいて支配状態にし、あとの1ポイントをマレーシアにでもおきましょう。
安保イベントは残しておけば、相手も日本には簡単に手がだせない。つかわないことが抑止力です。
アジアはどうしてもソ連有利に展開してしまいます。係争地の数で負ける可能性は大きいので、できるだけ非係争地もとって、支配している国の総数で引き離されないようにしましょう。
序盤プレイ中に注意すること
ソ連のイベントカードが手元にあれば、できるだけ序盤でイベントを消費して、後半使えないようにしておきましょう。
下手に宇宙開発や国連カードでのイベント無効化効果に逃げないほうがいいです。いずれ使われてしまうなら、自分がコントロールできるうちに消費したほうがいいです。
それと各地域での支配国の総数はつねに注意が必要です。
このゲームは係争地がもっとも大切ですが、前述したようにスコアにおける優勢状態(Dominance)の判定は、
1、相手より係争地が多い
2、相手より支配している国の数が多い(非係争地・係争地をすべて含めて)
です。
序盤のソ連相手に係争地争いはけっこうたいへんです。相手が2の条件を満たさないよう、非係争地をとることも戦略に入れていく必要があります。とくに中東とアジア。
序盤カードは3ターン目の開始時にすべて消費され、切り直しがおこなわれます。
それまでにアジア、中東、欧州の得点カードはかならず消費されるので、アメリカはスコアで大差がつかないよう、つねに各地域の支配国数に注意しましょう。
宇宙開発は点数になるので、できるだけ相手よりも先にやったほうがいいです。
あとパナマと南アフリカも支配状態にして、4ターン目以降にそなえておきます。
アンゴラ、ザイールは1ポイントで支配できますが、クーデターによってひっくりかえされる恐れあり。相手にとらせてクーデターでひっくりかえすほうが得です。
中盤以降の注意点
序盤を抜けられれば、アメリカ有利の展開になっていきます。
とくに欧州を支配して即時ゲーム終了させることも可能になります。そのため欧州の影響力にはつねに気を配りましょう。
アメリカの強みは欧州支配がやりやすいことです。うまく活かしていきましょう。
ソ連でプレイするときの注意点
このゲームは、基本的には前半ソ連、後半アメリカ有利に作られています。
何が有利かというと、ソ連のイベントカードがアメリカに比べて強いからです。それに枚数もアメリカより1枚多い。
あと中国カードを最初から持っています。
それにアクションラウンドでつねに先に行動できます。
基本的にソ連側は、序盤は強気でどんどん攻め、点差を大きく広げることを意識しましょう。
できれば中盤ぐらいに20点差をつけてゲーム終了にするのが理想的です。
初期配置
鉄板的な置き方のあるアメリカ側と違い、ソ連側の初期配置は頭を悩ませます。
すでに東ドイツには3が置かれて支配状態になっているので、残っている係争地はポーランドだけです。
とりあえずポーランドに3は当然として、あとの3をどこに配置するかが問題です。
防御力を高めたければ東ドイツに1おき、ポーランドには4、あとの1はオーストリアやユーゴスラビアに残りを置いて西欧をうかがう。
オーストリアは支配に影響力4必要なので、支配を早めたいならユーゴスラビアのほうがいいでしょう。
PC版でのCPUの初期配置ではユーゴスラビアに1を置いています。
攻撃的に行きたければ、残りの3をすべてユーゴスラビアにおいて支配してしまうのもいい。
このあたりは自分の戦略スタイルで個性の出るところです。
ソ連側の各地域での戦略
序盤(1~3ターン)での地域カードは、欧州、中東、アジアの3枚です。ここを重点的に攻めていきます。
地域別の攻略法を示します。どの地域から攻めるかはゲーム状況で判断してください。
欧州での戦略
実のところ、欧州でのソ連はそれほど有利ではありません。
なぜならアメリカ側である西欧の係争地は3つ、ソ連側である東欧の係争地は2つです。下手をすれば優勢状態の判定を序盤からアメリカ側にとられてしまう可能性もあります。
アメリカ側が欧州の3つの係争地をがっちりと守っているのなら、非係争地をとって支配国数に差をつけられないように注意しましょう。
支配国数さえ抜かれなければ、スコア判定のときには-1点程度ですみます。
またソ連には「ド・ゴール」のイベントカードがありますので、うまくやればフランス支配も可能かもしれません。
ただアメリカ側は西欧3係争地を死守してくる可能性が高いため、支配国数に差をつけられないことを最優先にして、非係争地をとっていきましょう。
中東での戦略
ソ連は初期配置でイスラエル、エジプト、リビア側に足がかり(影響力)がありません。そのため、ここを連鎖的にアメリカにとられてしまう可能性が高い。
とくに開幕と同時にアメリカがリビアをめざす可能性はひじょうに高い。
ただソ連側には「中東戦争」カード(イスラエルのアメリカの影響力をソ連に置き換える)や「ナセル大統領」カード(エジプトに影響力2を置き、アメリカは支配力半分)など、かなり強力なカードがあるので、これをうまくつかって中東での有利状態を保ちましょう。
アジアでの戦略
アジアではすでに北朝鮮を支配下においています。韓国支配のための「朝鮮戦争」カードもあるので、この2国は問題なく支配状態にできるでしょう。
問題は東南アジア唯一の係争地、タイです。
これはアメリカ側からの足がかりしかないので、アメリカにとられてしまう可能性はかなり高い。
「ベトナム蜂起」カードがあればベトナムに影響力2を置けるので、それを足がかりにしてタイをとりましょう。
それと係争地のパキスタン、インドよりも、非係争地のアフガニスタンを先に支配状態にしておくことのほうが重要です。
なぜならアフガニスタンはソ連に隣接した国なので、ここをアメリカにとられるとスコア計算のときにアメリカに+1点入ることになります。
パキスタン、インドは「印パ戦争」カードで簡単に支配をひっくり返されるので、それほど重視しなくてもいいかと。
また印パをとるなら、「印パ戦争」カード消費後に、一気にどっちもとってしまいましょう。
アメリカ側はソ連の支配状態を回避するために東南アジアの非係争地をとってくるでしょうから、こちらも支配国数で有利をつけられないように気をつけましょう。
序盤プレイ中に注意すること
アメリカ側のイベントカードがあれば、できるだけイベントを発生させて消費させましょう。
とくに「安保」カードなどは後半に残されるときわめてやっかいです。手元にきたらさっさとイベント発動で消費してしまいましょう。
アメリカ側のイベントはそれほど強力なものはないので、どんどんイベント発生させても問題ありません。
あと欧州はアメリカ有利の展開になる可能性もあるので、とにかく支配状態にされないことが重要です。
中盤以降の注意点
中盤以降も基本的にはおなじです。非係争地も積極的にとっていって、支配国数で抜かれないようにしましょう。宇宙開発も忘れずに。
またソ連は初期配置で中南米やアフリカに足がかりがありませんが、「カストロ」カードなどのイベントカードで足がかりをつくることができます。
足がかりができて戦況に余裕があったら、中南米やアフリカにも進出して中盤での20点差の決着をめざしましょう。
Steamのデジタル版『トワイライト・ストラグル』の初心者向け攻略法
さきほどまでは対人戦の話でしたが、おまけ的なものとして、Steamで配信されているデジタル版『トワイライト・ストラグル』のCPU戦攻略法について述べていきます。初心者がいかに勝つかという方法です。
陣営の選択
とにかくソ連を選びましょう。最初はこれに尽きます。
ルールもカードもろくに把握できていない初心者がいきなりやってアメリカで勝つのはかなり困難です。
なぜならこのゲームは、前半はソ連、後半はアメリカが強いようにできています。
このゲームは110種類のカードがあります。それが「序盤戦(EARLY WAR)」「中盤戦(MID WAR)」「終盤戦(LATE WAR)」の3種類にわけられており、4ターン目以降は中盤戦カードを、8ターン目以降は終盤戦カードを山札にまぜてプレイすることになっています。
後半はアメリカに有利なカードが増えていきますが、序盤はソ連が有利になっています。
PC版でプレイしていると、このあたりのカードのことはコンピューターが自動で処理してくれますからわかりづらくなっているかと思います。
あと終盤戦カードがあらわれる8ターン目というのは、このゲームではかなり後半です。
それまでに勝負がついてしまうことがほとんどでしょう。
ソ連を選ぶことのメリット
一番大きいのは、アクション・ラウンドではつねにソ連が先に行動できることです。
相手に先手先手をとられてしまい、デフコンを2に下げられてこっちは何もできなくなり、地域の得点カードで相手に勝利点をもっていかれ、軍事作戦判定でペナルティをくらってさらに勝利点が減点される。
このゲームには難易度設定がありませんので、CPUは初心者相手でも容赦なしです。
最終ラウンドにたどりつくまえに心を折られてしまうことがほとんどでしょう。
最初の設定で初期配置を有利にするinfluence handicap(初期配置のときに自由における影響力を増やせる)をつけることもできますが、やるなら対等でやりたいところです。
初期配置いじるとそもそもゲームの原型がわからなくなりますしね。自分の定石配置みたいなものがつくれなくなります。
ソ連を使えば勝てるというわけではありませんが、少なくともできることが何もないみたいな状況は防げるかと思います。
あとアメリカでのCPUのプレイ方法を見て、今後アメリカプレイするときの参考にできます。
ソ連に変更する方法
プレイヤーをソ連に変えるには、最初の熊のイラストの左にあるSKYPEアイコンみたいなのをクリックすればOKです。
あとこのゲームのカードの一覧を見たい場合は、
SETTING→CARD GALLERY
で見ることができます。
カードギャラリーは序盤戦、中盤戦、終盤戦でカードが分けられているのがいいですね。
とりあえず初心者はソ連でプレイして、何ができるかをさぐっていくのがいいかと思います。
あとは前述したソ連側の攻略法を使ってみてください。
まとめ
どちらの陣営でプレイするにしろ、相手に地域を優勢、または支配状態にされてしまわないように注意する必要があります。そうでないと点差を大きく引き離されてしまいます。そのため非係争地をとることは、戦略的にも重要になってきます。
それと勝利点が入るのはスコアカードを使ったときだけでです。スコアカードをいつ出すかのタイミングを見極めましょう。
またスコアカードをいつ使ったのか、あとなにが残っているのかもしっかり把握しておきましょう。このゲームの得点源はスコアカードなのです。
何度かプレイしていけば、自分なりの定石が見つかってくるはずです。できれば友人などとプレイしながら、たがいの手を評価し合うといいかと思います。