わかりやすい全訳『孫子の兵法書』その6:形篇ー気付かれないうちに勝つ?

2020年6月9日三國志14, 未分類三国志, 三國志, 孫子

sonshi6

ゲーマーのための兵法書シリーズわかりやすい全訳『孫子の兵法書』」第6回は、『孫子の兵法書』13篇の4篇目「形篇」をお届けします。前回の記事は以下のリンクから。

 

攻撃も防御も気付かれないように

「形篇」の「形」ってなにニャ?

軍の形、目に見える「態勢」のことですね。

ここでは「攻め」と「守り」についての内容になります。

孫子はいいました。

昔のいくさ上手の者は、まず敵が勝てない態勢を作ってから、敵に勝てる状況になるのを待ちました

敵を攻める前に、まずは負けない状態にしておくことが必要なのニャ。

さらに敵を攻撃するときも、「これなら勝てる」という状態に敵がなるまで待つ必要がありますね。

敵が弱みを見せるのを待つのニャ。

敵が自軍に勝てない態勢」を作るのは自軍の問題ですが、自軍が敵に勝てるかどうかは「敵の態勢次第」です。

ゆえに、いくさ上手の者でも、「敵が自軍に勝てない態勢」を作ることはできても、敵に「敗北確実の態勢」を作らせることはできません

ゆえに、どうやって勝てばいいのかがわかっていても、それを作り出すことはできないのです。

自分に干渉できても、敵に干渉することはできないのニャ。

たとえば受験勉強を頑張るのは自分の問題ですが、どんなレベルの難題(敵)かは相手の大学の問題であって、それに干渉することはできません。

敵が自軍に勝てない態勢というのは「守り」の態勢です。

自軍が敵に勝てる態勢というのは「攻め」の態勢です。

「守り」というのは、自軍の兵力が足りないからするのです。

「攻め」というのは、自軍の兵力にじゅうぶんな余裕があるからするのです。

言ってることはあたりまえニャ。兵力が足りなければ勝てないんだから、せめて守って負けないようにしないといけないニャ。攻めるのは、兵力に余裕があるときだけニャ。

会社も不景気なときは経費削減守りに入りますし、景気がいいときは設備投資とかをして攻めに転じますしね。

守りの上手い者は、地下のもっとも深いところに隠れます。

攻めの上手い者は、天のもっとも高いところで行動します。

ゆえに、自軍は無傷のままで、完全に勝利します。

ここちょっと意味がわからないニャ。

攻守が上手い人は、攻めるも守るも、敵に見つからないところで動いているということです。

こちらが行動していることを敵に気付かれないからこそ、無傷でいつの間にか勝利することができるのです。

」というのは目に見える態勢のことですが、それを見せてはいけないということです。

たとえば守りに入ったことを敵に気付かれれば(「形」を見せれば)、攻撃されてしまうかもしれません。

また攻めるときに敵に気付かれれば(「形」を見せれば)、守りを固められてしまいます。

ステルスモードで行動して、敵に気付かれないうちに目的を達成してしまうのニャ。

企業も新製品(攻め)を作ったら、当然秘密にするでしょう。それとおなじことです。

財務状況が悪化したときは、気付かれないように粉飾決算(守り)をするのニャ。

それはやっちゃだめなやつです。

 

人が気付く前に気付こう

勝利を読み取るのにあたって、一般の人でもわかるていどの読み取りでは、もっとも優れた者とはいえません。

これはようするに、「形」があらわれてしまってからでは、だれでも読み取れるということです。

優れた者は「形」があわれる前に読み取らないといけません。

とか仮想通貨が典型的ニャ。みんながもうかると思って買い始めたら、そのときはもう終了なのニャ。

世界恐慌前、ジョセフ・P・ケネディ氏(ジョン・F・ケネディの父親)が靴磨きの少年に靴を磨いてもらったとき、その少年が株の話を始めたのを聞いて、「これはもう終わりだ」と思って株をすべて売ったという逸話は有名です。

これは「形」があらわれる前に気付き、気付かれないように「守り」がおこなわれたことにもなります。逸話なので作り話だとは思いますが、言いたいことはよくわかります。

戦争に勝ち、天下の人びとからほめられても、それはもっとも優れた者とはいえません。

ゆえに、秋毫(秋に生え変わる細い毛)を持ち上げられるからといって、「力がある」とはいわないのです。

太陽や月が見えるからといって、「目がいい」とはいわないのです。

雷鳴を聞けるからといって、「耳がいい」とはいわないのです。

「形」があらわれてからなにかをするのは、誰でもできることなのニャ。

みんなが気付く前に、気付かれないようにひっそりと動ける人は優秀ですね。

 

勝てるときだけ戦う

昔のいくさ上手の者は、「勝てるときに勝つ者」です。

ゆえに、いくさ上手の者が勝ったときは、知謀に優れた名声もありませんし、武勇に優れた功績もありません。

ゆえに、いくさ上手の者は、戦えば「間違いなく」勝ちます。

間違いなく」というのは、いくさ上手の者の勝利は、すでに負けている敵を相手に勝っているからです。

絶対に勝てるときに戦って勝つのニャ。だから勝ってあたりまえなのニャ。

世の中は、「不利な状況から一発逆転」のようなものがもてはやされます。勝ってあたりまえの相手に勝っても誰も褒めてはくれません。名誉も功績もありません。

しかし戦争とは、「負けない態勢」を作ってから、「勝ってあたりまえ」の状態の敵と戦うべきなのです。

戦う前から勝てる状態」であることが大前提ですね。そうでなければ戦争をするべきではありません。

大勢の人の命がかかっているのニャ。石橋を叩いて叩いて渡るのニャ。

ゆえに、いくさ上手の者は、敵に負けない態勢を作ってから、敵に勝てる機会を見逃さないのです。

これゆえに、勝利する軍は戦う前に勝てる態勢を作っておき、そのあとに戦争をします。

敗北する軍は、まず戦争をして、そのあとに勝利を求めます。

とりあえずやってみよう」が敗北する軍ニャ。

リスクが小さければ「とりあえずやってみよう」でもいいですけど、負けたときの損害が大きいばあいは、それでやったらだめですね。

起業して1年後に残るのは100人中40人だけニャ。半分以上が脱落してるニャ。たぶんなんにも考えないで起業する人が多いからニャ。

なんにも考えていないわけではないとは思いますが、1年で消える人は事業計画が不十分だったのかもしれませんね。

 

兵法の5原則とまとめ

いくさ上手な者は、(道理)を修め、(軍法)を保ちます。

ゆえに勝敗を自由に決めることができるのです。

兵法は、

一に(ものさしではかる)

二に(枡目ではかる)

三に(数えてはかる)

四に(比較してはかる)

五に(勝敗をはかる)

です。

戦場の広さや距離をはかるのに「度」が必要で、

「度」の結果によって投入する「量(物量)」を考え、

「量」の結果によって動員すべき「数(兵数)」を考え、

「数」の結果によって敵味方の「称(比較)」を考え、

「称」の結果によって「勝(勝敗)」を考えます。

この「度・量・数・称・勝」が兵法の5原則ですね。

勝利への方程式ニャ。

ゆえに勝利する軍は、重い目方を使って、軽い目方と重さを比べるようなものです(かならず勝利します)。

敗北する軍は、軽い目方を使って、重い目方と重さを比べるようなものです(かならず敗北します)。

勝者が国民を戦わせるときは、満々と貯えた水を深い谷底へ落とすような勢いであり、これこそが「形」(勝者にとっての態勢)なのです。

勝者は勢いがあるのニャ。

この「勢い」というのが、次回の「勢篇」に続きます。

「形篇」はこれで終了です。次回は「勢篇」です。